独立行政法人 労働者福祉機構
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第一部

第一部 要約
I はじめに
 頻度
 物理化学的性質
 中毒発生の機序
 病態生理
II 臨床症状
 急性期の臨床症状(初期、主徴期)
  慢性期の臨床症状(主徴期から後期)
  意識障害の持続時間と後遺症の関係
 臨床症状による経過の違い
 後期(Bumke u. Krapf)の臨床症状
  遷延初期 通過症候群:失見当識健忘症候群
  遷延後期 後遺症の頻度

第二部

第二部 要約
III 遷延後期(後遺症):大脳皮質・神経心理症状
 先行失認の臨床類型:象徴型と視覚型
 実際の症例提示
 (1)象徴型
 (2)視覚型
 (3)重症び漫性型

第三部

第三部 要約
IV 経過
 初期から10年以後20年間まで
 長期経過10から30年後まで
V まとめ

初期から10年以後20年間まで

 最初に初期から10年乃至20年間迄についてのべます。 失行、失認と同等かそれより頻度の多い症状は記銘力障害です。
 三宅の対語試験の有関係の成績で見たのがこの図です。3-4ヶ月から遅くとも2-3年は上昇してくるのが見られます。

自発性低下や意欲障害の経過

 自発性低下や意欲障害の客観的な評価は困難です。
 次に述べる様な評価表を用いました。
 自発性低下の評価は治療の休憩に入る午後3時の自由な時間の患者の行動を看護師さんに記載して貰い、それをこの表の日常生活の活動性の評価に従って、自発性の高いものから依存的なものへと分類して評価しました。

表 日常生活活動性の評価(高松1964)

  1)無動―何もせずにぼんやり坐って居る。または寝転んでいる・・・0点
  2)依存的生活(他人の働きかけで行為する)
    イ) 個人的な働きかけで行為する・・・・・・・・・・・・・・1点
    ロ)  集団的な働きかけで行為する・・・・・・・・・・・・・2点
  2)自発的行為
    イ) 習慣的受動的行為(ラジオ、テレビ、新聞)・・・・・・・3点
    ロ) 習慣的能動的行為(日記、手紙。読書)・・・・・・・・・4点
  4)意欲的能動的行為(問題の解決)・・・・・・・・・・・・・・・5点

被災後の10ヶ月後迄と中等度症の症例を6年後に再評価してみました。

 1年以内は明かな抑うつ状態にあった症例(太い濃橙線)を除いて上昇は見られません。
 然し重症(茶、赤紫)中等度(太い青、緑)の症例を6年余(69ヶ月以後)と言う長い経過で見てみます。
 上昇して来るのが見られます。

物品名命名の経過

 物品名命名の回復は早く、多くは3ヶ月以内です。2ー3の重症例で1ー2年を要しました。
 読みの経過も命名に類似しています。

書字経過

 書字経過書字の経過は視空間障害の視覚型ではより早く固定してその後は回復して来ません。

視覚型書字経過

 しかしゲルストマン症候群に伴う象徴型では2年後位迄は徐々に回復して来ます。

象徴型書字経過

計算の経過

 筆算の障害は命名障害や読字の回復より遅く10ヶ月以上を要します。

 ゲルストマン症候群に伴う象徴型の筆算障害はより重篤であるにも関わらず、6ヶ月以後も回復する傾向を残しています。

手指失認

手指失認は7-8ヶ月で回復して来ます。

然し此の障害を身体図式障害の反映としての人物画でみて見ますと、

人物画の経過

視空間障害を伴う様な視覚型では1年以内にその障害は固定してしまいます。

象徴型ではその回復が2-3年間は見られます。

 象徴型では人物画の模写訓練を致しますと この象徴型の例の様に一時的に回復しますが、また何かの拍子に著しく崩れる事があります。回復はこの様な学習効果が反映しているものと思われます。視覚型では当然の事ながらこの様な練習効果や学習の効果は得られなせん。

以上種々の神経心理学的大脳症状の後期(主にに遷延初期)の症状固定の経過をまとめたのが下記の表です。

 CO中毒神経心理の後期(主に遷延初期)の症状固定の経過

     症 状     回復固定時期
    読字(漢字)    3ヶ月以内
    物品命名     3ヶ月以内−2、3年
    色彩命名     6ヶ月以内−2、3年
    手指認知    7-8ヶ月以内
    筆 算(加算)  10ヶ月以内
   (減算)象徴型    6ヶ月以内
       視覚型    6ヶ月以上
    書字 象徴型    1年以内
       視覚型    2年
    人物画 象徴型   1-2年
    視覚型       2-3年
    記銘力障害    3ヶ月以内
    自発性低下    年余(6年)

 それぞれは用いた検査の種類によって症状固定の時期が当然ながら異なって来ます。
 しかしCO中毒が病理学的に頭頂・後頭葉に傷害が強い事から当然の事ながら計算、書字、手指失認、人物画の回復が遅れて来ます。
 各症例の症状度は10年間は徐々に回復して来ます。
 この傾向は症状の頻度を見ても20年間はその後も物品命名、読字、書字、視空間障害や手指失認にも軽快傾向が伺い知れます。しかし時計時間認知障害や観念運動失行は思ったほど、あまり軽快傾向が見られません。例えばこのお茶飲み動作の失敗したM氏は20年後のには問題なく出来ました。またこの煙草をのむ喫煙動作に初期に失敗していたI氏も20年後には問題なく出来る様になっています。
 しかしこの様な煙草をのむ仕草の真似の動作では、指を煙草の代わりにしていますが、身体の一部を道具に仕立てる動作が目立ちます。これを"Body part as objects"と言います。

 「さよならの仕草」の「バイバイ。」、また「人を招く動作」の「オイデオイデの仕草」の様な動作のジェスチュア?をさせると、それを見る人にそのジェスチュアーの意味を充分に伝える事来ま せん。不十分な動作しか出来ないのです。この障害を観念運動失行と言います。

 お茶飲みや喫煙動作の様な道具操作である観念失行は治り易いのですが、ゼスチュアー動作である観念運動失行は治り難いようです。
 この例I氏のMRIをもう一度見てみますと左右の頭頂葉に病巣が見られます。

 この病巣が関係しているのかも知れません。この様に一般に勿論病巣に関係した症状は治り難く残ります。


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